このように演技直前や演技中に声を出すのはNG。国内選手権大会や国際競技会では、写真撮影も全面禁止だ。さらに、演技中の座席の移動もしてはいけない。

「分厚いクッションを敷いて、少しでもよく見ようとする人もいますが、後ろの人の邪魔になるのでマナー違反です」(同)

 羽生といえば、演技後のリンクに大量のプーさんが投げ込まれるシーンも話題だ。この投げ込み物にもルールがある。投げ込んだ際、リンクに物が散らないこと。花束も花びらが散らないよう、上の部分をしっかりと閉じる。閉じていない場合には、会場のラッピングサービスを利用する。さらに、リンクに傷をつけるような硬いものもNG。万が一、他の客に当たってもケガしないものに限られる。ぬいぐるみは、全てのルールをクリアした、絶好の投げ込み物というわけだ。

 ただ、投げ込むにはある程度前の席まで行かないとリンクに届かない。そこで、お気に入りの選手の演技前に通路の後方に移動。肝心の演技は立ち見で見て、演技終了後にダッシュで階段を駆け下り、プレゼントを投げる。本末転倒な気もするが、ファンにとっては、この瞬間こそ「私たちの出番!」というわけだ。

 盛り上げるためには、横断幕やお気に入りの選手名をつづった「バナー」と呼ばれる応援幕も用意したい。このバナーにも、細かな大会のルールがある。まずサイズは横断幕が1.8×1.2メートル以内。手持ちのバナーは、自席からはみ出さないサイズが鉄則だ。手持ちバナーは、演技が始まる前後に声援とともに広げて“ゆらゆら”させる。決して振り上げたりしてはいけない。ジャニーズファンの鉄の掟である「応援団扇は、胸の高さまで」と同じだ。

「一目でいいから、自分のバナーがお気に入りの選手の視界に入ってほしいという一心で、手作りします」

 冒頭の佐竹さんは、個人でスケオタたちのバナー制作を請け負っている。平昌五輪のために佐竹さんが制作したのが、フリーの演目「SEIMEI」の衣装風のバナー。透け感のある唐草模様があしらわれた生地に、アイロンラメシートを切り抜いて文字を作成し、縁取りには両面サテンリボン、表面にはゴールドのガラスストーンをちりばめた。

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