高血圧は脳卒中を引き起こすと言われているが、脳卒中には「脳梗塞」「脳内出血」「くも膜下出血」の3種類がある。上の図1を見ると、高血圧によって血管が破れる脳出血死亡は51年に95%を占めていたが、現在は激減し20%台で横ばいになっている。現代は昔とちがって栄養状態が良くなり、血管が丈夫になって破れにくくなったと考えられている。逆に脳内の血管が詰まる脳梗塞が増えた。
「脳梗塞は血圧が低いときに起きる疾患です。脳の血管が詰まりかけたとき、血圧を上げて血栓を押し流そうとしているのに、薬で血圧を下げたら命取りになります。私は降圧剤を飲んでいたせいで脳梗塞になった患者さんを何人も診てきました」(前出の松本氏)
大櫛氏は福島県郡山市で降圧剤治療を受けている約4万1千人を対象に6年間、追跡調査した。その結果、180/110以上の人で脳梗塞による死亡率が、降圧剤を使わない人より約5倍も高くなったという。
「血圧180の人が基準値を目指して、強い治療を受けたことが原因です。血圧は20以上下げると危険だということがわかります」
ここに、神奈川県伊勢原市で約2万7千人を対象にした大櫛氏の調査結果がある。年代別に血圧レベルと死亡率の関係を検証したところ、70代で180/110以上が微増しているが、80歳以上ではほとんど死亡率との関係性は見られなかった。高血圧よりも降圧剤のほうが怖いのだ。降圧剤治療が必要なのは、心臓や血管が肥大するなど重症化したケースだ。風呂上がりや就寝前など安静時に「年齢プラス90」以下ならば、まず降圧剤は不要という。ただし、減薬・断薬は注意深く行う必要がある。
大櫛氏が説明する。
「一度にやめると、薬によって抑えられていた血圧が一気に上昇する危険性がある。冬場は避けて暖かい時期から行うようにします。薬の量を半分にするか、隔日にして徐々に減らしていきましょう。数カ月で元の血圧に戻ったら、そのとき全量を中止します」
まずはストレス解消を。(本誌・亀井洋志)
※週刊朝日 2018年3月16日号