『長生きしたければ高血圧のウソに気づきなさい』の著者で、東海大学名誉教授の大櫛陽一氏が指摘する。

「高血圧は作られた病気です。血圧の基準値を下げれば当然、治療対象者は増えます。欧米では90年代に製薬企業が多くの降圧剤を開発し、その売り上げを伸ばすために政治家や臨床学会に利益供与を行い、WHO(世界保健機関)などに圧力をかけた。やはり高血圧の治療ラインを140/90以上に下げさせたのです。彼らは“高血圧マフィア”と呼ばれ、日本もその影響を受けたわけです」

 その後、欧米では歪められた基準に対して改革の機運が高まり、研究費の寄付など利益相反行為に対して莫大な罰金が科せられるようになった。米政府は13年に、60歳以上で“年齢プラス90”までが基準値で問題ないと発表した。

 だが、日本はいまだ“高血圧マフィア”の影響から抜け出せていないという。

「降圧剤と血管拡張剤を合わせると年間約9千億円という巨大市場になっている。日本の医者は『本態性高血圧=原因不明』という病名をつけて、降圧剤を処方していますが、血圧は必ず理由があって上がるのです。その原因を突き止めようとしないで、血圧が高いから下げるという対症療法は最悪で医者の怠慢というほかありません」(大櫛氏)

 年をとれば血管は硬くなり、加齢とともに血圧が上がるのは自然なこと。大櫛氏によれば、このほか高血圧の原因として挙げられるのは、(1)ストレス、不安(2)アルコール、運動不足、睡眠不足(3)高血糖、閉鎖不全弁膜症、慢性貧血、腎動脈狭窄などの病気がある。

「診察や健診で高血圧とされたほとんどの人は(1)と(2)です。(3)の病気が原因の人はごく一部です。仕事が忙しすぎれば労働環境を改善したり、食事や飲酒、運動不足など生活習慣を見直したりすればいいのです」(大櫛氏)

 原因を取り除かずに薬で下げても、また血圧は上がってくる。そのため、薬の量を倍にしたり、複数の薬剤を併用したりするようになる。現在、血圧を下げる薬には、血管を収縮させる物質の作用を抑制するARBや、血管拡張剤のカルシウム拮抗剤などがある。いずれも、めまいやふらつきを起こすなど副作用も少なくない。転倒による事故や風呂場での水死につながる事例もあるが、最も懸念されるのは脳梗塞になるリスクが高まることだ。

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