
イラストレーターの安西水丸さんが亡くなって、3月19日で4年になる。昨年12月、水丸さんの絵に一人娘の安西カオリさんが文をつけた絵本が出版された。カオリさんに初の父子共作について聞いた。
ページをめくるたびに、ゾウ、ワニ、ネコなどの動物が現れる。『安西水丸のどうぶつパシャパシャ』(文芸社)は、水丸さんの描いた動物をデジカメやスマートフォンで「パシャパシャ」と撮って楽しんでもらおうという絵本だ。
「今は子供でも気軽に写真が撮れますから」
とカオリさん。「パシャパシャ」は、水丸さんと取材旅行をした写真家の小平尚典さんが、フィルムを切らしたときに声で撮るまねをして、水丸さんがおもしろがった言葉だった。小平さんは11点の絵を集め、カオリさんに文章を依頼した。
カオリさんは雑誌などにエッセーを寄稿している。
「父は絵の生徒さんに、うまい絵ではなく、自分にしか描けない絵を描くことを勧めていました。私も自分らしいものを書いていきたい。今回も父と私にしかできない絵本を作れたら、という思いでした」
リズミカルな言葉に乗って読み進むと、緑色のウマが登場する。常識よりも感じたままの色を大切にして、という水丸さんのメッセージがこもる。
水丸さんは鎌倉のアトリエで倒れた。71歳だった。
「父は好きなことを見つけて、一直線にその道を行きました。幸せな生き方だったと思います」
やさしい父だったが厳しい面もあった。
「僕の娘ということはスタートから恵まれているのだから」
と言われたこともある。
残された作品には絵本も多い。カオリさんには忘れられない一冊がある。幼いころ、家族ぐるみで付き合いのあった嵐山光三郎さんの息子と自分をモデルにしたウサギの話、『ピッキーとポッキー』だ。水丸さんは嵐山さんと共作し、自ら娘に読み聞かせた。
当時は自宅の近くに小さな書店がいくつかあったから、よくいっしょに絵本を買いに行った。肩車してもらった記憶もある。「お父さんのお嫁さんになりたい」少女だった。