治療には健康保険は使えるが、環境改善や症状を抑える対症療法以外に方法がない上、この病気を診られる医師も少ない。うつ状態や不安などを訴え、ドクターショッピングを繰り返した揚げ句、精神疾患と誤診される患者さんも多い。

「周囲の無関心、無協力も患者を苦しめている」(渡辺さん)とも。換気の良い場所に席替えする、柔軟剤の使用を控えるといった配慮や協力があるだけでも、ラクになることがある。だが、職場でそうした希望がかなわず、退職を余儀なくされるケースもある。広田さんは訴える。

「たばこを吸わない方は、“少し前に誰かがたばこを吸った”ことが残り香でわかりますよね。同様に化学物質過敏症の患者さんは一般の人にはわからない化学物質を感じ、その刺激で症状が出てしまうんです」

 迷惑になるだけでなく、健康へも影響を及ぼしかねない香害。いま一度、においとの付き合い方を見直すべきなのかもしれない。(本誌・山内リカ)

週刊朝日 2018年2月2日号