「なかでも、得意な範囲が出題された、など『偶然よい成績』を出してしまうと、やっかいです」(同)

 東京大学を志望した山田君(仮名)は、それまでのC判定から一気にA判定に上がった。快楽物質のドーパミンが分泌され、気分は高揚する。しかし、興奮からさめれば、「成績が落ちれば恥をかく」「親に見捨てられる」と山田君の不安は募るばかり。山田君の脳機能もこの状況に反応した。感情を操る脳の扁桃体はストレスをつかさどるコルチゾールと呼ばれるホルモンの分泌を促すが、その影響で脳神経がダメージを受け、「うつ」の原因になるのだ。

 次に、急に暴れだしたり罵声を浴びせたり、といった暴力や暴走行為だ。「中高年のうつは、気力や体力の低下に向かうが、若年層の場合、暴力などに向かう傾向がある」(同)

 自宅訪問のカウンセリングでは、穴の開いたリビングの壁や壊れたドア、3本しか脚がないダイニングテーブルを目にすることも珍しくないという。

「自分の部屋ではなく、リビングなど家族の目に入る場所で暴れる受験生も多いです。これは家族へのSOSサイン。子どもは、無意識のうちに親をつなぎとめる行為に及んでいるわけです」(同)

 だが、思春期に親や家族に対して乱暴な態度を見せる「反抗期」もこうした行動に近いイメージがある。両者の違いは何か。

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