ならば、効果的な歯磨きのタイミングはいつなのだろうか。

「プラークが爆発的に増えるのは唾液の少ない夜、眠っているときです。ですから私は最低でも、1日に2回、寝る前と朝にプラークコントロールをすべきだと思います」(森さん)

 さらに、食後すぐに歯磨きをすることには弊害もあるという。それは「唾液」の効能を、口をゆすぐなどして打ち消してしまうからだ。

 東京医科歯科大学大学院生涯口腔保健衛生学分野の荒川真一教授によると、虫歯の第1段階は、口の中の酸によるエナメル質の破壊だ。脱灰(歯の成分が溶け出すこと)と呼ばれ、歯に虫歯菌がたまりやすくなり虫歯が進行する。その初期の段階で有効なのは「唾液」だ。

 私たちが「おいしい」と感じるものは、酸性のものが多い。そのため、食事の後は口の中が酸性に傾いている。食後に、酸による脱灰から回復させる(再石灰化)ためには、唾液をしっかり出すと良い。

 どうしても食後は口の中がスッキリしないという人でも、せめて食後30分ほどしてから歯磨きを行うのがいいだろう。十分な唾液のパワーを活用するためだ。

 そのほか、歯磨き剤に含まれる界面活性剤による歯や身体へのダメージを指摘する声もある。

 歯磨きの目的やタイミング以外にも、歯の磨き方や使う道具で誤解はある。

 前出の歯科医師の森さんが著書の中で指摘する間違いは、「歯ブラシと歯磨き剤を使ってゴシゴシみがく(方法)」こと。

 海外では「プラークコントロール」という言葉を使うが、日本では「歯磨きする」という言葉で口のケアが表現されている。この「磨く」という表現が問題なのかもしれない。ゴシゴシと歯の表面だけを磨く人が多いからだ。

 歯磨きは、「プラーク」のコントロールにターゲットをしぼらないと意味がない。これまで歯磨きは、歯ブラシ1本でしっかり時間をかけて丁寧にやっているから十分と思っていた人も、ぜひこの機会に、歯科医らが推奨する「本当に正しい歯磨き法」を知っておこう。

 前出の歯科衛生士の豊山さんは、

「大事なのは、歯と歯肉の境目の細菌のかたまりを取り除くこと。歯の平らな表面だけを磨くのはもう卒業しましょう」

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