虫歯にならないために、食後30分以内に──。そんな心がけで、歯磨きを続けている人は多い。ただ、もしこれが無意味どころか、歯に悪い影響を及ぼしていたとしたら……。“お口のケア”にまつわる常識・非常識を歯科医らに取材し、今すぐ実践すべき歯磨きの正しい方法をまとめた。
毎日の習慣になっている歯磨き。その目的は、毎回食事でついた食べかすを取り除くためだと思っていないだろうか。実は、そこから間違っているという。
「いわゆる歯磨きで、大事なのは『歯を磨く』ことではなく、『口の中の細菌を取り除く』ことなのです」
このように説明するのは、歯科衛生士の豊山とえ子さんだ。歯は磨いてこそ、虫歯予防ができると思っていた人には衝撃だろう。豊山さんは著書『歯は磨かないでください~歯周病を治すと、全身が健康になる』の中でも、その“誤解”について記している。
歯磨きの本来の目的は、食後に歯についた食べかすが歯垢(プラーク)にならぬように、「プラークをコントロールする」ことだと豊山さんは指摘する。
「多くの人は、歯垢=食べかす、と考えているようですが違います」
プラークは、漢字で歯の垢と書くが単なる「かす」のことではなく、細菌のかたまりのことだ。プラークをほうっておくと、口の中で細菌が増殖し、これが虫歯の原因になる。それを取り除くために、歯磨きが必要というわけだ。
一般にプラークは食後8時間ほどで作られ、48時間で歯石になるといわれている。いったん硬い歯石になると、歯ブラシなどでは容易にとることができなくなる。つまり、食後48時間以内に歯磨きなどでプラークをコントロールすれば虫歯や歯周病の予防になる。48時間を、24時間と言う人もいるが、いずれにしても「食後すぐ」は誤解。そんなに急ぐ必要はないのだ。
竹屋町森歯科クリニック院長の森昭歯科医師はこう話す。
「『歯磨き』とは食べかすをとることではなく、プラークをコントロールすることなのです。だから、毎食後の必要はありません。食べかすは直接虫歯にはなりません。直接関係するのはプラークですから」
森さんは、『やっぱり、歯はみがいてはいけない 実践編』(共著)を出版。その中で、「私が考える歯磨きに関する『勘違い』」の一つとして、「一日3回の食後すぐ(タイミング)」と指摘している。