弾道ミサイルを発射し続ける北朝鮮に対して、トランプ大統領の米国は、どんな対応をするのであろうか(※写真はイメージ)
弾道ミサイルを発射し続ける北朝鮮に対して、トランプ大統領の米国は、どんな対応をするのであろうか(※写真はイメージ)

 ジャーナリストの田原総一朗氏は、北朝鮮に対する追加制裁について“骨抜き”だという。

*  *  *

 9月11日に、国連安全保障理事会での北朝鮮に対する追加制裁決議が、全会一致で可決された。

 前夜まで、常任理事国であるロシアと中国が反対して可決できないのではないか、との不安が強く、とくにロシアは、7日のウラジオストクでの安倍晋三首相との首脳会談でプーチン大統領が北朝鮮に対する追加制裁にきわめて批判的な姿勢を示したので、私自身、ロシアは反対するのではないか、と予想していた。

 全会一致で可決されて、その点ではホッとした。

 だが、制裁決議は北朝鮮への原油供給禁止、石油精製品の輸出禁止、さらに北朝鮮労働者の国外での活動全面禁止、そして金正恩委員長の資産凍結・渡航禁止などの厳しい措置が軒並み外された。ロシア、中国の合意を得るために骨抜きになってしまったのである。

 否決されると、トランプ大統領のメンツがつぶれるために大きく妥協したのであろう。

 だが、米国政府は、今回の国連安保理決議を大きな成功であった、と発表している。そして日本政府も成功だ、と高く評価している。最初に大変厳しい制裁案を示しロシア、中国を含む理事国に配布した。そして、11日の制裁決議では確かに大幅に修正したのだが、もしも北朝鮮が弾道ミサイル発射などの挑発を行えば、ただちに最初の厳しい制裁案を採決するぞ、と北朝鮮に警告したことになる。ロシアと中国は、そのことを承知していて賛成したのだ、というのである。

 日本のマスメディアも、おおむね決議を評価している。しかし、私が信用している安全保障に詳しい専門家たちは、これに異議を唱えて、「言ってみれば、大本営発表みたいなもの」だと言い、「だけど表立っては言えない」と念押しをした。

 私も、このような骨抜きの制裁では、問題解決の糸口にはならないととらえている。

 ティラーソン国務長官が「新たな6カ国協議を始めよう」という河野太郎外相の説得を拒んだのは、「米国は北朝鮮が核廃棄を決意しない限り対話しない」という強い姿勢を示したことを意味する。

著者プロフィールを見る
田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

田原総一朗の記事一覧はこちら
次のページ