北朝鮮との対話を拒んで、米国はいったいどうしようとしているのか(※写真はイメージ)
北朝鮮との対話を拒んで、米国はいったいどうしようとしているのか(※写真はイメージ)

 日本へ弾道ミサイルを発射した北朝鮮。ジャーナリストの田原総一朗氏は「挑発」や「暴挙」ではないと指摘する。

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 北朝鮮が、8月29日の午前5時58分(日本時間、以下同)に、首都平壌の順安区域付近から弾道ミサイル1発を北東方向に向けて発射した。ミサイルは北海道・渡島半島と襟裳岬の上空を通過した後、6時12分に襟裳岬東方約1180キロの太平洋上に落下した。

 8月30日の各紙は「社説」で、次のように主張している。

「北朝鮮がまた危険極まりない挑発に出た。今回は日本の上空を横切るミサイル発射である。断じて容認できない暴挙だ。(中略)蛮行で隣国を脅かす金正恩政権に強い憤りを覚える。国際社会はまず、北朝鮮に事態の深刻さを伝え、強い非難の意思を示すべきだ」(朝日新聞)

「日本の上空や周辺海域を実験場にするのは、国際法をまったく無視した暴挙である。国連安全保障理事会はまず強い非難声明を出し、加盟国に制裁決議の履行を求めることが重要だ」(東京新聞)

「予告なしの早朝の発射が、奇襲攻撃能力を誇示する狙いであるのは間違いない。幸い、航空機や船舶の被害は避けられたが、一歩間違えれば大惨事となっていた。断じて容認できない」(読売新聞)

「北朝鮮は、自国を標的とする米国の懲罰的・報復的抑止力は恐れている。だが、その力を持たない日本の頭上へは、平然とミサイルを撃ってきた。(中略)日本が取ってきた『専守防衛』という抑制的な立場では十分な対応はとれない。そのことを国民に説明し、『積極防衛』への転換を宣言すべきだ」(産経新聞)

 多くの新聞やテレビが北朝鮮の行動を「挑発」「暴挙」だと強調しているが、毎日新聞は北朝鮮非難だけではなく、日本主導で(日米韓中ロの)5カ国協議を設け、「北朝鮮の核開発をやめさせる方策を意見調整すべきだ」と主張している。

 私もそう思う。前回記したように、韓国の文在寅大統領は米国に対して、「北朝鮮に弾道ミサイル発射や核実験をやめさせる。そのかわりに米韓合同軍事演習をやめて、金正恩と対話をしないか。私が仲立ちする」と懸命に訴えたのだが、米側は拒んで、米韓合同軍事演習を強行したのであった。

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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