7月19日、連合の本部前であった抗議集会(撮影/亀井洋志)
7月19日、連合の本部前であった抗議集会(撮影/亀井洋志)
7月19日、連合の本部前であった抗議集会(撮影/亀井洋志)
7月19日、連合の本部前であった抗議集会(撮影/亀井洋志)

 世界的に通用する言葉になった「KAROSHI」。大手広告代理店・電通の新入社員の過労自殺もあって、問題への関心は高まっている。そんな中、日本最大の労働組合の中央組織「連合」が、高年収の人を労働時間の規制から外す制度について、条件付きで容認する姿勢を見せた。

【写真】連合の方向転換に抗議するデモの様子

 労働基準法の改正案に含まれる「高度プロフェッショナル」という制度で、高年収の人は深夜や休日に仕事をしても割増賃金などが支払われなくなる。労組側や野党などは「長時間労働を助長する残業代ゼロ法案だ」などと批判し、改正案の取り下げを求めてきた。

 労働問題に詳しい今泉義竜弁護士はこう指摘する。

「ブラック企業がブラックではなく、ホワイトになってしまう制度です。電通のような企業からどうやって過労死を防ぐかが課題だったはずですが、残業代をゼロにしてしまう制度を作るのは理解できない」

 連合も強く反対してきたはずだったが、神津里季生(こうづりきお)会長は7月13日、安倍晋三首相と首相官邸で会談。働き過ぎを防ぐ対策の充実を条件に、容認に転じた。

 執行部の一部が方針転換を主導したことに、傘下の労組からも反発があった。7月19日夜には労組関係者や市民ら約100人が連合本部前に集まり、「私の残業、勝手に売るな!」などと声を上げた。

 過労死防止に取り組んできた関係者も懸念を示す。「全国過労死を考える家族の会」の代表で、夫を過労自殺で失った寺西笑子さんの口調は厳しい。

「なぜ方針転換したのか理解できません。命の危険がある制度を受け入れるようでは、労働者の命や健康を守れません。裏切られた思いで、本当に怒り心頭です」

 寺西さんの連合執行部に対する不審は、実は以前からくすぶっていた。残業時間の規制について、繁忙期など特別の場合の上限を「月100時間未満」とする案を、連合は政府や経団連と3月に合意した。

「月80時間でも危ないのに、100時間ギリギリまではOKという誤った認識を植え付けます。とても前進とは言えません」(寺西さん)

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