批判は強まるばかりで、連合は過労死などを巡る社会の意識の高まりに、十分対応できていなかった。こうした“空気が読めない”背景には、連合が抱える構造的な問題がある。

 680万人ほどの組合員を抱える巨大組織だが、6千万人ほどの国内の働き手全体からみれば、一部でしかない。連合の内部で発言力が強いのは、待遇に恵まれた大企業や公務員の労組の代表だ。長時間勤務が当たり前の「ブラック企業」で働く人らの切実な声は届きにくい。その連合が全労働者の代弁者として振る舞うことには、「勝手に労働者を代表するな」との意見もある。

 政府や経団連と、水面下で「条件闘争」を繰り返してきた手法も、不信感を招いている。労使が対立する問題があると、表向きは反対しつつ、ごく一部の幹部が相手と話し合って妥協点を探ってきた。政府や経団連に全面的に押し切られるより、労働者側にとって有利な条件を引き出す方が、最終的にプラスだとの考え方だ。労使の問題に妥協はつきものだが、水面下の交渉では、多くの人の納得は得られにくい。

 連合は今回、予想以上の批判を受けたことで、残業代ゼロ法案について政府や経団連との合意を見送る可能性も出てきた。連合が社会の〝空気〟をどこまで感じ取れるかが問われている。(本誌・亀井洋志)

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