冒頭で述べたとおり、多くの患者はCがもっとも重要、というイメージがあると思うが、結果は、もっとも重要度が高い「5」と回答した歯科医師の割合は、もっとも低く、67%。4項目の中でいちばん多くの歯科医師が「5」と回答したのは、Aの治療計画で89%。Bのコミュニケーション能力が68%、Dのメインテナンスが71%という結果だった。

 治療計画は、近年、一本の歯を治すだけでなく、口全体や患者の全身状態を含めて立てる考え方が広がりつつある。一方で歯科の中では、細分化された専門性が高まっており、複数の専門領域を総合的に検討する治療計画が必要とされている。そして、なにより患者の希望や生活環境などを考慮したうえで、最適な治療計画を立てられるかが重要だ。

 どの項目も「いい歯科医師」の重要な要素ではあるが、なかでも治療計画が「5」と回答した歯科医師の割合がもっとも高かったのは、それだけ歯科医師自身が「治療の質」に差が出やすいと感じているからではないだろうか。

 二つ目の設問は、「自分が患者だとしたら、歯科医師選びでチェックするポイントは?」。実際の歯科医師は、自分の人脈を通して歯科医師選びをしているようだが、もしそれができないふつうの患者だとしたらどうか。実際にかかる前に判断できるものとして、七つの項目から複数回答可で答えてもらった。

 もっとも多かったのが、Aの専門領域で、85%の歯科医師がチェックすると回答。次いで多かったのが、Bの所属する学会や専門医資格で、52%だった。

 歯科には、矯正歯科、小児歯科、口腔外科といった高い専門性を持つ領域があり、また、一般歯科の中でも歯周病の治療、歯の根の治療をする「歯内療法」、入れ歯やブリッジなど失った歯を補う「補綴治療」など、さまざまな専門領域がある。それぞれ学会に所属するなどして、日進月歩の最新治療を学習し、研鑽していく必要がある。

 Aの専門領域をチェックするのは、自分が患者であればその症状に合った専門性の高い治療を求めるということを表す結果だ。裏を返せば「なんでもやります」という歯科医師にはかからないということだろう。Bの所属する学会や専門医資格は、それだけで見極められるわけではないが、Aと同様に専門性やその分野に対する学習意欲などを知る参考になるのかもしれない。

 意外に回答が多かったのが、Fの歯科衛生士の配置で47%。歯科衛生士がいると、予防に対する意識が高い歯科医師だとわかるようだ。

 もっとも回答が少なかったのは、Gの営業時間・立地で17%。夜間も営業していたり、駅の近くで通いやすかったりする、患者にとっての利便性は、「いい歯医者」を探すうえではそれほど重要ではなさそうだ。

 患者自身が歯科の知識を得て、歯科医師を見極められるようになってほしい。

週刊朝日 2017年7月21日号