夫:いつもそうしてたの!

妻:危ないって! 生の牛肉よ? 「うわ、なんだこのケモノみたいな人は!」と。同時に「あ、この人かっこいい!」って思った。

妻:そこからはもう、ただの「追っかけ」ですよ。行く先々に飛んでいって、週3日は会うようにしてた。

夫:よく都合つけたな。

妻:そんなんが1年以上も続いて、勝手に恋人気分になるわけです。あるとき「周りの人に、彼氏ですって言っていいよね?」と。

夫:それも飲んだ後、神戸・三宮の繁華街をふらふら歩いてるときに、いきなり言うんですよ!

妻:そしたらこの人、満面の笑みで「なんで?」て!

夫:ははは。

妻:「なんで?ってことないでしょう!」「わけがわからんから『なんで?』だろう!」って。夫婦(めおと)漫才みたいなことになって。

夫:考えてみてよ。お互い30代後半ですよ? それで1年付き合ってきて、今さら「僕と付き合ってください」なんて、言えます? 中学生じゃあるまいし。

妻:きちんとしたかった。

夫:事実上付き合ってるんだし。

妻:ほかにもちらほら、いましたしー。ガールフレンドがー!

夫:ははは。彼女が言うほど問題になることはありませんでしたよ。ただ、ファンはいました。だから「特定の誰かのものになる」ことには、「対処する段取り」が必要だったわけで……。

妻:「それは困る!」って言うような人じゃないんです。ただムスッとして、「好きにしろ」みたいな。

夫:でも、そっからがすごかった(笑)。

「プロポーズでも大げんか 小原正子夫妻の『普通』に対する葛藤」へつづく

週刊朝日 2017年4月28日号より抜粋