サッカー界でも“忖度(そんたく)”騒動が勃発した。
スペイン国王来日に際して安倍晋三首相主催の晩餐会に、サッカースペイン1部リーグ「エイバル」所属の乾貴士が招待されたのだが、ネットではリーグ開催中の主力選手を呼び寄せるとは何事か、と盛り上がった。忖度の疑いをかけられた外務省は、
「ブログなどに出ている記事は事実に反しています。乾選手に関してはチームも含めてご本人もぜひということで参加が決まりました。強いご意向でした」
乾のマネジメントを担当するSARCLEも「チームメートとの『行っちゃっていいの?』というやりとりがただ誇張して表現されているだけ」とコメント。
サッカージャーナリストの後藤健生氏はこう言う。
「エイバルはすでに1部残留は確定している。残りの試合はどうしても勝たなければという状況だったら、貴重な戦力である彼を手放さなかったかもしれない。過去に選手に日本語表記のユニホームを着せるなどしており、今回の帰国はアジア市場に近づける千載一遇の機会として、逃したくなかったのでしょう」
確かに、エイバルの公式ホームページには「国際的戦略のステップと考え、帰国を許可」とある。
スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏は辛口だ。
「ヨーロッパチームの貪欲さを感じる。彼らにとって選手は『材料』でしかない。契約金も競技能力だけでなく、人気度なども含めた商品価値が判断材料になる。選手がその『商品化』の現実を自覚しなければ、使い捨てにされるだけ」
その晩餐会。参加人数は80人。うち約半数を乾のようなスペインに縁のあるスポーツ選手や文化人が占めた。谷口氏は続ける。
「本当にスポーツが好きな首相だったらこういうことはしないだろう。海外のプロリーグのシーズン中に選手を日本に呼び戻すのはナンセンス。スポーツの世界への無知さをさらけ出した」
これでは乾のファンは報われない。乾側は「名誉なことと感じている」とコメントするが、果たして本心は──。
※週刊朝日 2017年4月21日号