作家の室井佑月氏は「政治家の使命」として安倍晋三首相を批判した山本太郎参院議員について、こういう。

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 1月25日、自由党共同代表の山本太郎参院議員が参院代表質問に立った。自由党と社民党の参院統一会派「希望の会」の代表として。ネットに動画がアップされているから、まだ見ていない人はぜひ見てよ。

 闘う男とは、まさに彼のことをいう。戦争を美化し、言葉だけ勇ましい男とはぜんぜん違う。

 太郎ちゃんの質問はこんな感じではじまった。

「先日、安倍総理が施政方針演説で『ただ批判に明け暮れても何も生まれない』とおっしゃりましたので、きょうは批判ではなく、政権のこれまでのお仕事を肯定的に振り返り、褒め殺し気味に、希望の会、自由・社民を代表し総理に質問します」

 のっけから嫌味ではじまる戦闘モード。

「安倍総理は誰のための政治をおこなっていらっしゃいますか。(中略)庶民を犠牲にして大企業を儲けさせる、そのご活躍ぶり、歴代の総理大臣を見てもナンバーワンです!」

 それから、太郎ちゃんは庶民を犠牲にする安倍総理の働きぶりを話した。

「庶民から搾り取った税金で、庶民への再分配は最低限に抑え、真っ先に手当てをするのは、選挙や、権力基盤づくりでお世話になった経団連や大企業など資本家、高額納税者へのご恩返し。とことんおいしい減税、補助金メニューを提供。(中略)見ているのは大口の支持者のみ。まさに大企業ファースト! これぞ額に汗を流す政治家の鑑(かがみ)ではないでしょうか」

 子どもの貧困や、原発問題、共謀罪にも踏み込んだ。そして、最後に安倍総理を真っすぐに見ていった。

「今回、無理をして批判は避けようと思いましたが、どう考えても無理です。総理、あなたがこの国の総理でいる限り、この国の未来はもちません。最後にお伺いします。総理、いつ総理の座から降りていただけるのでしょうか?」

 真っすぐな目で真っすぐな質問。

 
 巷の軽い人たちが、国会の質問に立ち、総理大臣にいつ辞めるのか聞くなんて……というくだらない評価を下していたりするが、あたしはまるで一本の映画を見たようだ、と思った。感動し目頭が熱くなった。

 太郎ちゃんは質問の冒頭で、

「政治の使命はこの国に生きる人々の生命・財産を守ること、そう考えます」

 と語った。彼は真面目にそう考えているのだろう。

 使命とは、使者として受けた命令だ。彼はほんとうに国民の使者として、動いている。

 この国の舵取りを安倍さんに任せていいのか、なぜ安倍さんでは駄目なのかを、太郎ちゃんはきちんと言葉にして発した。それが政治家の使命だからだ。

 数だけ多い自民党議員や、自民党と選挙協力している公明党の議員は、その反対になぜ安倍さんに賛同するのか、今の自分の立場ではなく、国民の使者としての議員の立場で語れるのか? マスコミもおなじ。誰の使者であるべきなのか?

週刊朝日 2017年2月17日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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