日本では2007年に「がん対策基本法」が施行、それを受けて「がん対策推進基本計画(基本計画)」が作られている。このがん対策に対し、総務省が出した勧告の一つが、「がんの早期発見のための取り組みの推進」。つまるところ、「がん検診」をもっとしっかりやってよ、と厚労省に訴えたわけだ。
では、どんながん検診対策が望ましいのか。
今、全国各地から視察に訪れ、注目されているのが、東京都八王子市だ。胃がん、肺がん、子宮頸がん、乳がんの四つのがんで精検受診率90%以上を達成した。同市の医療保険部成人健診課は、「人口50万人都市でここまで精検受診率が高いのは、ほかにあまりないのでは」と自信を見せる。
同市は、もともとがん検診に対する意識が高い医師会と連携。肺のエックス線検査や乳がんのマンモグラフィ検査では見逃しのないよう二重読影が基本だが、医師会内に専門の委員会が設置され、複数の医師が画像を囲む形でチェックしているという。
そのうえで、再検査が必要な人には医師会から推薦を受けた医療機関が紹介され、受診の結果が把握できない場合は、専属の保健師が直接電話をかけるなどして確認をとる。
10年からはがん検診に特化したシンクタンクと契約。その助言を受けてコール・リコールを実施。施策は事前に必ず対象となる年代の住民に意見を聞く。
「乳がんや子宮頸がんのがん検診受診勧奨ハガキは、年齢が低い人と高い人でメッセージを使い分けています。若い人はがんと自分が結びつかないので、若干、危険性を訴えるネガティブな内容のほうが受診率アップには有効でした。一方、年齢の高めの人には命を守ることの重要性を訴えた内容にしています」(同)
こうした施策はすべてデータ化し、結果を評価するのも、八王子市の検診対策の特徴だ。
「基本コンセプトは、『一度検診を受けた方を逃さない』。自治体のがん検診は対象者をつかむことが難しい。ですので、一度検診を受けていただいた方をつなぎ留める。新規の受診者を獲得しつつ、そうやって2回目以降のがん検診受診につなげることが大事だと考えています」(同)
(本誌・山内リカ、吉崎洋夫)
※週刊朝日 2016年12月30日号