現在、彼女が日々の料理で用いているアブラは3種類のみ。アマニ(亜麻仁)油と純正ラード、バターだ。炒めものはもちろん、自家製マヨネーズやドレッシングのオイルとしても利用。年に数回だがラードで揚げものもしている。バターやアマニ油は少し値段が張るが、夫婦2人なら、それほど量を必要としない。

「体調を崩して病院で診てもらうことを考えたら安いもの」(同)

 林さんが用いているアブラはどんなものなのか。アブラと一口に言っても、いくつかに分類される。

 まず、アブラには体内で作ることのできるものとできないものがある。後者を必須脂肪酸(多価不飽和脂肪酸)と呼び、オメガ3系とオメガ6系に分かれる。オメガ3系のαリノレン酸はアマニ油やエゴマ油に多く、魚のアブラであるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)とともに、脳の神経細胞の材料になり、脳の機能を保つ。私たちに必要不可欠のアブラだが、体内で作ることができないため、意識して摂らないと不足に陥ってしまう。

 残りの二つ、動物性脂肪のラードやバターは飽和脂肪酸の一つ。これまで動脈硬化の原因である悪玉のLDLコレステロールの材料であることから、“体に悪いアブラ”と考えられていた。だが、最近になってオメガ6系(リノール酸)より安全という考え方も出てきている。林さんも、最初は動物性のアブラを摂ることに抵抗感があったという。

「それでも、試しにラードやバターを料理に使う生活を始めたら、体の調子も悪くないんです。冷蔵庫で保存ができ、酸化しにくいため、使いやすいこともわかりました。そんなに大量に摂るわけではないですし、今は安全なアブラとして捉えています」(同)

週刊朝日 2016年12月23日号