年明けの解散が見送られた場合、来夏の都議選などを挟み、解散時期はかなり遅くなるという観測もある。この間に「小池新党」の準備が着々と進むことになるのだ。

 ただ、本当に新党が国政に進出するシナリオが実現した場合でも、その先は一筋縄ではいかないという。元経産官僚の古賀茂明氏がこう語る。

「大統領を国民が直接選ぶ米国と違い、日本では議会による首班指名を得る必要があるため、小池氏が首相になるのは難しい。もしあるとすれば、与党の支持率が落ちて選挙で過半数を割った時に、小池氏を首相にするという条件で『小池新党』と自民党・公明党が連立すること。仮に橋下氏が小池氏と組んで共同代表になっていたとしても、年齢が上の小池氏に先に首相の座を譲って、『小池首相』が誕生する可能性はある」

 小池氏はかつて国会議員、本県知事を経て首相の座を射止めた細川護煕氏の片腕として「日本新党」で活躍した成功体験がある。

 そのお膳立てをしたのが、小沢一郎氏。彼こそが政治塾を立ち上げて候補者を発掘する手法を編み出した元祖なのだ。側近だった小池氏は当時、二階氏と一緒にその手法を学んでいる。

 そして1994年、その小沢氏にしてやられて野党に転落していた自民党が与党復帰のために社会党の村山富市氏を首班指名することを条件に成立させた「自社さ連立政権」という前例もある。

 さらに「自民党をぶっ壊す」と叫んで、劣勢から見事に首相の座を射止め、刺客選挙までやってのけた小泉純一郎元首相が作り上げた「劇場」という手法も、環境相として支えながら学んでいる。

 今は盤石な安倍政権だが、20年の東京五輪の後は景気が悪化するという指摘もあり、安倍首相の後継者となる人材も見えてこない。

 五輪開催直前に1期目の任期を終える小池氏はその時点で68歳。今回大統領選を戦ったヒラリー氏よりもまだ1歳若い。都政で一定の成果を上げていたならば、国政に復帰して「小池首相」が誕生する日も、あながち夢物語と言えないのではないか。(本誌・小泉耕平、上田耕司)

週刊朝日  2016年11月25日号より抜粋