「わが子が演技の道に入るとは、思わないわ。娘に『お芝居をやってみたら?』と言ってみたりするのだけれど、やらないし。これからどうなるのかは、わからないけれどね」

 一方で、彼女自身の中で、演技に対する情熱は、今もなお燃え続けている。

「これまでより、ずっと熱く燃えているかもしれない。それは、何か偉大なことを達成してやろうと、もはや思っていないからなのよ。それよりも、作品中のキャラクターやストーリーをしっかりと掘り下げていくことだけに、すべてを専念している。若い時は若いキャラクターを演じ、中年になったら中年を演じる。それができるのが、この仕事のすばらしいところよ」

 だからムーアは、ハリウッドで活動していても、年を取っていくことを恐れていない。結婚し、子供を産み、育て、家族と暮らす。そのすべての経験が糧となり、女優として演技の幅を広げるだけでなく、人間としての厚みにもつながっているのだろう。

「幸いなことに私は、家族とキャリアの両方を築くことができた。自分でも信じられないわ。両方とも満足できる確率は、とても低いのよ。自分にそれが起こったのだという事実を思い出すたびに、衝撃を感じる。演技に関しても、こんなふうに演技を愛し続けてこられたことに、自分でも驚いている。ここまで自分の興味が持続するとは思っていなかったわ。でも、そうなった。だからこれを続けていきたい」

週刊朝日 2016年11月18日号