ローレルとステイシーがぎこちなく出会い、時には意見の相違がありながらも愛を深めていく様子をリアルに描くことは、この物語を語る上で、一番重要な部分だ。

「私たちは、文字通り、毎日を一緒に過ごした。彼女は演技上のパートナーというだけでなく、友達という形のパートナーにもなったのよ。おかげで、今作は、これまでで最も楽しませてもらった作品になったわ。私とエレンは、役を演じる上で、彼女らが異性カップルと何も変わらないんだというところを見せたかったの。この映画が何かに貢献ができるのだとしたら、それは、人々に違った概念を知ってもらうことじゃないかと思う。語られることで、受け入れる心が広がっていくことを、私は願っているわ」

 LGBT(性的少数者)の権利や人間としての平等といったテーマのほかに、ムーアは作品に込められたメッセージをこのように読み解いた。

「これはラブストーリー。人生を見つめてみて、自分にとって何が一番大切かを考えたら、人間関係だと気づくでしょう。とくに私生活でのパートナーとの関係。そしてその人と築き上げた家庭。それがどんなものかを伝えることに、私は細心の注意を払った」

 ムーア自身は、映画監督で脚本家の夫バート・フレインドリッチとの間に、ふたりの子供をもつ。結婚は03年だが、つきあいは1996年からで、ちょうど20年だ。人生で一番誇りに思っていることは何かと聞くと、迷いなく「家族」と答えた。

「結婚を維持していくのが大変だというのは、誰もが知っていることでしょう。誰かと長い間ずっと一緒にいるのは、たやすいことではない。でも、私たちは、それをやってきた。私と夫の関係はとても良いものだと、私は感じている。子供たちも健康で幸せ。それは素敵なことよ」

 母親がハリウッド女優ならば、子供も自然とその道に進みそうだが、聞けば、最近大学に入学した長男は、バスケットボールに夢中。現在高校生の娘も、演技への興味は示していないという。

次のページ