大規模停電を引き起こした送電ケーブル火災 (c)朝日新聞社
大規模停電を引き起こした送電ケーブル火災 (c)朝日新聞社

 前門の虎、後門の狼──。東京電力の経営陣はこんな心境ではないだろうか。東京都内の約58万戸が停電した地中送電ケーブル火災を受けて東電は安全対策に乗り出しているが、東日本大震災による福島第一原発事故の賠償金、廃炉費用などにも巨額な資金を必要としており、さらなる難題が降りかかった形だ。

 今回の火災で注目を浴びたのが、現場の送電に使われていたOFケーブル。真ん中に油が通る管があり、その周りに導体、絶縁紙を巻いてある。絶縁紙は、油で湿らせて絶縁効果を高めている。今回の火災は設置から約35年経っていたOFケーブルに何らかの原因で火がついた可能性が指摘されている。

 日本電線工業会の関係者はこう話す。

「OFケーブルは安全性が高く、大量送電に適しているため全国に普及した。現在は主流ではなく、1990年代からは油を使わずにポリエチレンで絶縁するCVケーブルが使われている」

 OFケーブルの仕様設計年数は約35年だが、東電によると2012年末の管内のOFケーブルは総延長約1400キロ。15年末時点で35年を超えて使われているのは約千キロあるという。

 OFケーブルの劣化は非常に緩やかであるとされてきたが、絶縁破壊事例が確認されたことを受けて電力用電線ケーブルメーカーが2年前に論文を発表し、仕様設計より早く劣化する危険性が指摘されていた。

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