ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「あ行タレントの苦難。好感度ランキング」を取り上げる。

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 テレビ視聴率を調査したりしているビデオリサーチ社が、定期的に実施する『タレントイメージ調査』。この超有名なのに謎だらけのランキングですが、どうやら年に2回(2月と8月)実施されているとのことで、今年8月度の結果が先日発表されました。『好きな男性タレント』の第1位は阿部寛さんで、女性は綾瀬はるかさんだそうです。これといって異論はないものの、それでもやはり実態が見えなさ過ぎる感は否めません。

 以前、この調査の回答方法に関して、「あらかじめタレント一覧(男女各500人)が『あいうえお順』で記載されており、好きなタレントに〇を付ける」という噂を耳にしたことがあります。奇遇にも阿部さんも綾瀬さんも『あ行』です。以下トップ10内に名を連ねた『あ行タレント』は、2位イチローさんと浅田真央さん、3位の明石家さんまさんと天海祐希さんを始め、大泉洋さん、阿部サダヲさん、杏さん、いきものがかりさん、新垣結衣さん、石原さとみさんといった人気者ばかり。思わず○を付けてしまうのも納得です。そりゃそうでしょう。人気者の名前しか載っていないんですから。ただ、この結果で分かることは、「芸能界は『あ行』が充実している」ということだけだと思うのですが。

 一方で、『あ行』にもかかわらず選に漏れてしまった人気者たちの存在も忘れてはなりません。女性だと相田翔子さん、赤木春恵さん、安達祐実さん、安藤優子さんなど。いずれも◎級のスターです。さらに「あびる優」「あべ静江」「あめくみちこ」の御三方はどうしたのか? 選挙でも『ひらがな表記』の名前は、より優位と言われているにもかかわらず、です。まさか500人のリストに入っていないなんてことないですよね? 天地真理さんは? ともあれ『あ行』の有名人は、思いのほか余計なストレスを背負わされていることを、どうか皆さんお忘れなく。仮にこれが「あかさたな別・好きなタレントランキング」になった場合、私はマツコさん、美川さん、美輪さんと同じ『厚塗り激戦区』を戦わねばなりません。さらに松本潤・松本人志・松岡修造といったカリスマたちもいます。『ま行(男性部門)』も相当難儀です。

 
 そして長年の謎と言えば、ランキング上位の常連であるドリカムさん。今期も安定の第4位です。思うに、『た行』まで目を通す人というのは、恐らく『わ行』までしっかりと見る人でしょう。なのに今さら「ドリカム」に○を? もちろん好感度抜群のスーパーバンドですが。ねえ、どうして~♪ もっと味わい深いのが、中島みゆき(10位)と松任谷由実(38位)です。時代や世相など関係なく、頑なに自分を貫く強者が一定数いる頼もしさを感じます。ただし、47位の八千草薫さんに至っては、一覧表を逆からめくってしまったお年寄りの票が集まったと考えるのが妥当かと。吉永小百合さんとの『や行・一騎打ち』として、今や季節の風物詩となりつつあるようです。

 しかし、このランキング最大の胡散臭さは、「東京駅を中心とした半径30キロ圏内」でしか調査していないという点に尽きます。上沼恵美子さんや宮根さん、そして福岡ではマツコさんなど足下にも及ばないほどの安定感を誇る「おすぎさん」の存在が反映されていないランキングなど、いったい何の意味があるのでしょう。

週刊朝日  2016年10月21日号

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ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

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