横浜市青葉区の住宅街。かつて人気の街並みも高齢世帯が増えつつある (c)朝日新聞社
横浜市青葉区の住宅街。かつて人気の街並みも高齢世帯が増えつつある (c)朝日新聞社

 2033年、約3軒に1軒が空き家になる──。こんな衝撃的な予測が6月、野村総合研究所(NRI)から発表された。親が住んでいた実家や、苦心して買ったマイホームが家余りの時代に突入する。放置すれば、資産はリスクに変わり、倒壊や火災の恐れや、犯罪の温床にもなりかねない。思い出の持ち家を救う策はあるのか。

 閑静な住宅街の東京・高円寺。新宿から電車で約10分と、交通の便がいい。この街に住む男性Aさん(68)は自嘲気味に語った。

「私の自宅を売ろうと思っているんですが、売れないんです。値段が安すぎて……」

 Aさんは4人きょうだいの長男。30年前、親の援助を受け、高円寺の実家の近くに4千万円で木造2階建ての一軒家を買った。

 両親の介護で実家に移り住み、面倒を見てきた。13年前に父を亡くし、昨年母が亡くなった。母が生前、「一等地だから、将来的にも持っていたほうがいい」と言っていた自宅は、空き家のまま。賃貸に出したが、借り手は見つからなかった。

「不動産屋は『5千万円で売れます』と請け合いましたが、買い手は『2千万円なら』という人がいるぐらい。金額に差が開きすぎて、どうしたらいいか」

 東京・世田谷に住む50代の外資系会社員の男性Bさんは4年前、千葉県八千代市の実家で一人暮らしをしていた母を亡くした。土地の広さは70坪。実家は20年前にリフォームしたが、なんと5千万円をかけたのだという。

「実家を改修したローンがまだ残っていて、世田谷のマンションのローンと二重苦で、月25万円を払ってます。実家の固定資産税は年間12万円で、世田谷のマンションも同じくらい。2カ月に1度は実家に戻り、雑草の手入れなどをしてます。正直売りたいんですが、買い手がつくかどうか難しいでしょうね」

 総務省が5年に1回実施する「住宅・土地統計調査」によると、2013年の日本の空き家の数は約820万戸。5年前に比べて63万戸も増えた。総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.5%だが、前出の野村総研の予測によれば、少子高齢化の影響で23年に20%を突破、今から17年後には30%を超えるという。

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