「この間、主演映画を撮っているとき、ずっとこの舞台のことが気にかかっていたせいか、監督からの質問に、同じ温度で答えられなかったことがあったんです。『あ、これじゃダメだ!』って、慌ててこの舞台のことを頭から追い出して、映画に集中しましたけど(苦笑)。そんな失敗も含めて、いくつになっても勉強ですね」

 表現は、その人が持っているものの中から出てくるもの。だから、自分の情動を突き動かしてくれる刺激的な人と会うことと、芝居の場数を踏むことが、俳優を続けていく上で不可欠だと思っているそうだ。

「とくに演劇は、稽古する期間も長いし、美術も衣装も、一つひとつできあがっていく過程が見えるので、ゼロから物づくりしている感じがすごくあります。ただ、俳優なんていい役が来なかったら、廃れていくわけで(苦笑)。もうダメだと思ったら、自分で手を挙げて辞める、っていう選択もあるのかもしれない」

「いつかはハワイでカフェのオーナーをやってみたい」とジョーク交じりに彼は話すけれど、こんな才能、映像界や演劇界が手放すはずはない。

週刊朝日  2016年10月7日号