ロッテは「噛むこと研究室」というプロジェクトを展開し、噛んで得られる健康を打ち出している。ロッテの関氏は「長く噛むことで得られる健康価値を、科学的根拠に基づいて発信したいと思います」と話す。モンデリーズはガムを噛むシーンを広げるため、たばこやハンバーガーを買った人へサンプルを提供した。

 ガム離れは、日本だけの問題ではないようだ。モンデリーズの川鍋氏は言う。

「原因は各国とも、だいたい似ています。若年層の問題や他の菓子との競合。ただ、アメリカではほぼ横ばいに戻っています。施策をシェアし、日本でも市場の活性化を図りたいですね」

 ガムを「面倒くさい」ととらえる“困った”若者が増えている。どうするか。ロッテの関氏は言う。

「聞き間違いかと思いましたが、ガムを『硬い』と感じる若者が少なからずいて衝撃でした。我々が考える以上に、若者や子どもの噛む力が弱っている。噛むことへの意識が変わってきたのではないでしょうか」

 ロッテが09年に発売した「フィッツ」は、やわらかい噛みごたえと「噛むとフニャン」のフレーズのCMでヒットした。

「小さい子は軟らかい風船ガム、中高生はフィッツ、エチケットを気にする社会人はキシリトールやアクオ、そして歯ぐきの健康を保つにはオーラテクト。ガムと一緒に、成長して頂きたいですね」(関氏)

 ガム離れの原因の一つにスマホを挙げる説もある。かつては手持ち無沙汰になると、何となくガムに手を出した。今はすぐにスマホを手に取ってしまう。

 モンデリーズは“ライバル”を取り込もうと、人気スマホゲーム「モンスターストライク」と連携し、相乗効果をねらう。川鍋氏は「ゲームに集中するには、ガムが合う。噛むことでより高得点を取れ、より楽しめます」と言う。

 ロッテが若者へアピールするために目をつけたのは、女性のアニメ・声優ファン。人気商品を6人のイケメンキャラに擬人化し、人気声優に声をあててもらった。すると、SNSを中心に話題を集めた。

「『ロッテがおかしくなった』『バカじゃないの?』と、最大級の賛辞(?)も頂きました。商品を買うことを『くうるさん、あくおくんをお迎えに行きました』と言うお客様もいて、楽しんで頂いていると実感しました」(関氏)

“車離れ”にも手を打っている。ロッテは8月から全国のトヨタ販売店で、プリウスを試乗した人へ特製のガムを配っている。その名も「プリウス試乗味ガム」。プリウスの部品を擬人化したものなど、全59種ある。関氏は言う。

「弊社の研究員が新型プリウスに実際に乗り、味のイメージを膨らませました。車を運転する方が買われることが多いブラックブラックをベースに、滑らかな乗り心地、加速は爽やかな刺激などで表現しています」

 ガムの取材を重ね、忘れていた噛む楽しみを再発見した思いがする。ずっとガムを噛みながら仕上げたこの記事、いつもより「ハカどーる」だったかも?

週刊朝日 2016年10月7日号