モンデリーズ・ジャパンのガム(撮影/小原雄輝)
モンデリーズ・ジャパンのガム(撮影/小原雄輝)
ロッテのガム(撮影/小原雄輝)
ロッテのガム(撮影/小原雄輝)

 ガムの売り上げが10年間で4割も落ちている。若者の車離れやスマホの普及がガム離れを加速させている、との説も。日本人はどうして、そんなにガムを噛まなくなったのか。高校生に、ガムは「おいしいけれど面倒くさいお菓子」らしい。捨てるのが煩わしく、ずっと噛むことも面倒だと。ガムが“面倒くさい”扱いなのだ。

 日本チューインガム協会に聞いてみた。ガムの“ピーク”は2004年。国内生産量が4万6100トンで、小売額が1881億円。それ以降は減り続け、15年は2万7780トン、1113億円まで落ちている。

 ガムの誕生は西暦300年ごろにさかのぼる。中米で樹液を噛む習慣があったことが発祥という。日本では戦後、米軍によって爆発的に広がった。美空ひばりが「左のポッケにゃチュウインガム」(東京キッド)と歌ったガムだが、急速にファンが減っている。

 同協会の担当者は、景気低迷を要因の一つとみる。

「ガムを買わないのは、嫌いなのではなく、『何となく』との答えも多い。景気が悪いなか、極端に言えば『買わなくてもよいもの』になった面があります」

 街なかでゴミ箱が減ったこと、タブレット菓子などの「錠菓」やグミの人気も一因とみられる。オフィスでの歯磨き習慣が広がり、食後にガムを噛む機会が減ったことも考えられそうだ。

 国内シェア1位のロッテの悩みは深い。マーケティング統括部の関哲哉部長は言う。

「団塊の世代は駅の売店でガムとスポーツ紙を買い、通勤時に楽しんでくれました。その団塊の世代がリタイアし、購入者のボリューム層が抜けてしまいました」

 車に乗らない若者が増え、ガムを口にするシーンが減ったことも考えられる。タブレット菓子やグミが普及したことについて、関氏は「ガムしか買わなかった方が、そのときの気分でご自身に合うものを買い分けるようになりました」と言う。

 現在のガムの主流は、シュガーレス。歯には悪くないはずだ。ガムにしかない、噛み続けることの効果に、各社は活路を見いだす。

「クロレッツ」や「リカルデント」などのヒット商品を出したモンデリーズ・ジャパン。川鍋洋治取締役は言う。

「クロレッツは、長持ちさせることで息さわやかに。リカルデントも噛み続けると、歯によい成分を得られる。噛むと、顎の発達や健康につながる。ガムならではの便益を訴えています」

 同社が一昨年に掲げたメッセージは、「ガムならハカどーる」。噛んでスッキリと気分転換、仕事の効率も上がるとのキャンペーンを展開した。昨年は「キレちゃう前にガム!」と、噛んでイライラ解消を訴えた。

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