11年には、市と三菱自が協力し、東京都内にある同社本社ショールームで、地場産業のジーンズをPRする「愛着ジーンズフェア」を開いた。伊東市長も会場を訪れ、当時の益子修社長とトークショーを披露。首都圏でのトップセールスを展開した。

 三菱自の不正発覚後、「市の基幹産業の危機」と懸念を示した伊東市長。日産との提携を「ものづくり産業の維持や雇用確保につながると期待」と歓迎した。三菱自に手をさしのべた日産のゴーン氏は、ひとまず倉敷市の救世主になった。

 不安もある。主力生産拠点の閉鎖、系列取引の見直しなど、日産のリストラで大なたをふるった「ゴーン・ショック」だ。

 日産への傘下入り後も、三菱自は自主経営を続ける。ただ、傷ついたブランドで国内販売が先細れば、日産の関与が強まる恐れはある。三菱グループや地元自治体の熱意に支えられた水島製作所も、生産体制見直しの可能性はある。

 三菱自の企業城下町は「ゴーン・ショック」を免れられるのか。東京の三菱自本社でフェアを開いたこともある伊東市長。水島製作所の維持・発展を求め、ゴーン氏がいる横浜市の日産本社へ日参する日が来るかもしれない。

週刊朝日  2016年5月27日号