これには複数のNGOが「日本政府の国際人権基準を軽視する姿勢の表れと国際社会から受け止められる」と批判する声明を発表。改めての日程設定に際しても日本政府が「国会会期中を避け、今年秋以降にしたい」と提示したため、NGO関係者らから「夏の参院選前を避けたい政権の意向か」といぶかる声も出た。ケイ氏が早期の訪日を希望し、4月の公式訪日が実現した。

 ケイ氏は12日、調査開始にあたって報道陣の取材に応じ「放送法問題で大臣に会いたい」と明言。番組の公平性を理由に放送局の「電波停止」に言及した高市早苗総務相との面会を希望した。

 しかし面会は実現せず、総務省の副大臣や局長が対応。調査を終えて離日する直前の19日に開いた記者会見でケイ氏は「大臣に会いたいと繰り返し申し入れたが、国会会期中で会えなかった」と残念がった。(朝日新聞編集委員・北野隆一)

 日本での8日間の調査をケイ氏がまとめた暫定調査結果は、具体的で多岐にわたる。「メディアの独立」の項目では、放送法の問題に多くの行数が費やされた。

 自民党が14年11月、選挙中の中立公平な報道を求める文書を放送局に送ったことや、菅義偉官房長官が15年2月にオフレコ会合で、あるテレビ番組が放送法に違反していると批判したとされる件に触れた。

 著名なニュースキャスターやコメンテーターが相次いでテレビの報道番組から降板した問題では、元経済産業省官僚の古賀茂明氏の実名をあげたうえで、政府からの圧力でテレビに出演できなくなったと主張していることを紹介した。

 またNHKについて「国会はNHKの経営委員に同意し、予算を承認する。特に現在のように国会が一つの連立勢力に支配されているときは、放送局が独立性を欠いているように見える」と述べたうえで、籾井勝人会長の「政府が右と言うことを左と言うわけにはいかない」との発言を籾井氏の実名とともに記した。

週刊朝日  2016年5月20日号より抜粋