また、07年末に監督に就任し、かつてオヤジギャグを連発し、「ノリさん」と慕われた佐々木則夫監督。名将もいまでは選手と一線を引くようになり、険しい表情ばかりが目立った。

 中国戦ではその佐々木監督があえてロングボールを多用する策を立てたが、失敗に終わり、MF阪口夢穂はこう口にした。

「監督の指示なのでやるしかなかったが、よかったかどうか。ロングボールが増えたことで、チャンスもあったが、逆に守備のバランスが悪くなったと感じた」

 結果論だが、監督と選手の溝の深まりが、ピッチ内にも影響したのは間違いないだろう。

 この敗戦を受けて、日本サッカー協会は今予選限りでの佐々木監督の退任を認めた。後任は、14年のU17(17歳以下)女子W杯で“リトルなでしこ”を率い、優勝を成し遂げ、現在はU20(20歳以下)女子日本代表の監督を務める高倉麻子氏が有力。実現すれば、なでしこジャパン史上初の女性監督の誕生だ。自国開催の20年東京五輪に向け再スタートを切ることになる。(本誌・松岡かすみ、上田耕司、牧野めぐみ、藤村かおり/栗原正夫)

週刊朝日 2016年3月25日号