肝臓は大きく「左葉」と「右葉」に分けられ、左葉はさらに「外側区域」と「内側区域」に、右葉は「前区域」と「後区域」に分けられる。区域よりもっと小さく八つに分けた一区分を「亜区域」と呼ぶ。

 がんが大きく、肝機能が悪くない場合などは、がんのある葉や区域ごとざっくり取り出す「葉切除」や「区域切除」がおこなわれることもある。一方、がんが限局している場合や肝機能が低下し大きく切除することが難しい場合などには、がんがある一区分を切り取る「亜区域切除」や、がんのある部分のみをえぐり取る「部分切除」をする。

 開腹でおこなってきたすべての手術を腹腔鏡下という動作制限がある中で同じレベルでできるわけではなく、対象は狭まる。健康保険の対象となる範囲・条件はさらに狭く、現在認められているのは、肝臓の一部を切り取る「部分切除」と、肝臓の左側の区域を一括して切除する「外側区域切除」のみだ。

 その二つの術式のうち、「外側区域切除」はおなかの正面に位置しているので腹腔鏡で容易にアプローチできる。離断する面積も小さいため、出血が少なく、安全に切除しやすい。もうひとつの「部分切除」は、がんの場所によっては取りにくいが、肝臓の手前端にがんがあれば容易な手術だという。

 胃がんや大腸がんなどの消化器系、婦人科系、泌尿器系などさまざまな種類のがんに採用されている腹腔鏡下手術だが、肝がんではそれほど多くない。佐野医師は、その理由を肝臓という臓器の特異性があるため、と説明する。

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