肝がん腹腔鏡下手術は本当に危険?(※イメージ)
肝がん腹腔鏡下手術は本当に危険?(※イメージ)

 一昨年から腹腔鏡下(ふくくうきょうか)手術による死亡事故(※1)の報道が相次ぎ、患者に恐怖が広がった。しかし、腹腔鏡下手術が治療の一つの選択肢であることに変わりはない。患者はどう考え、選択すればいいかを探るため、好評発売中の週刊朝日ムック「いい病院2016」から、一部抜粋してお届けする。

 腹腔鏡下手術は日本では1990年、胆嚢(たんのう)摘出術に初めて導入された。91年以降は胃がんを皮切りに、がんの手術もおこなわれるようになった。肝がんでは93年、大腸がんの肝転移患者に対し、1例目が実施されている。その後、この治療を導入する病院は徐々に増えて、2010年4月には肝がんの一部に健康保険が認められた。

 腹腔鏡下手術の最大のメリットは、傷が小さい分、からだへの負担が少ないことだ。

 一般的な開腹手術は、おなかを肋骨(ろっこつ)に沿って大きくJ字形や逆L字形に切り、その下の筋肉も切開する。術後は痛みが長引いて、回復にも時間がかかり、最短でも2週間の入院が必要になる。

 長年、肝胆膵(かんたんすい)領域を専門にしてきた帝京大学病院外科の佐野圭二医師は、こう話す。

「開腹でも腹腔鏡でも摘出する臓器は同じなのに、腹腔鏡のほうが患者さんのダメージは少なく、回復が早い。痛みの引きも早く、1週間程度で退院できる。また大きな傷は残らず、見た目も優れています」

 では、何が問題なのか。肝がんの切除手術は、がんの状態や肝機能などによってたくさんのバリエーションがあり、難易度もさまざまだ。

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