例えば熟年には入院や施設入居等は身近な問題だ。総合解決法律事務所の代表弁護士所長の兼子裕さんは言う。

「医療側としては、命に関わる処置をする際、万一、患者が亡くなり、遺族から損害賠償を請求されることを想定し、手術前などに家族の意向を確認し、同意を求めることが考えられます」

 事実婚に対しては医療側が、本当に二人は夫婦同然の関係か、同意できる立場にない赤の他人ではないか?と疑い、同意を渋る場合もあるようだ。

「その場合に備えるには、パートナーによる医療措置同意のサイン代行を準婚姻(内縁)契約書で定めておくことも一案でしょう」(兼子さん)

 内縁契約書には、内縁関係の存在や、生活費用の共同・分担などを記載するという。また賃貸借契約書に同居人として相手の名を記したり、同一住所の住民票の届け出をし、収入や支出の口座を一つに統一して証拠を積み重ねることも大事。弁護士などに頼んで生活の手続きを依頼することも可能だ。

 何も準備していないと、晩年に右往左往することがある。埼玉県に住むM子さん(80)のパートナーは昨年8月、90歳で亡くなった。

「5年前から認知症状が出て自宅でケアをしていましたが、脳卒中で救急搬送し、その後、施設に入りました」

 パートナーは施設でまた体調を崩し、病院に移って亡くなった。M子さんは毎日見舞いに行ったが、遺体は「一緒に住んだ家」に戻らなかった。

「内縁のため、遺体を引き取れなかったのです」

週刊朝日 2016年2月5日号より抜粋