とはいえ、才能でもおっぱいでもない方向へ突出しているのが、木皿ドラマのヒロイン。今回は、富士山のふもとのコンビニ「富士ファミリー」の三姉妹・鷹子(薬師丸ひろ子)、ナスミ(小泉今日子)、月美(ミムラ)。次女・ナスミは幽霊で、三女・月美はそば屋で吸血鬼に出会い、笑子バアさん(片桐はいり)は道端に落ちていたマツコロイド(日本テレビ系のバラエティー「マツコとマツコ」に出てきたアンドロイドだけど、紅白の演出ばりに民放物件をちゃっかり使うよね、NHK)に遭遇。この世ならぬものが大集合する木皿ドラマの集大成みたいな話だ。

 人に迷惑かけるだけなら、生きていく意味がないと言う笑子バアさんに、「きっと意味があるのよ」と告げる介護専用ロボット(人を介護するのではなく、人に介護されるためにいるロボットらしい)・マツコロイド。生きてる者の心の後押しをする、命無き者たち。吸血鬼のような永遠の命は無くても、限られた命で、気分よく暮らしていけたらそれでいい。長女・鷹子も幽霊の導きで、20年断り続けていた春田(高橋克実)のプロポーズを、ついに受ける。そう、才能が無くても、おっぱいが無くても、髪の毛が無くても、幸せだったらいいじゃない。

週刊朝日 2016年1月22日号