「今回、北朝鮮は中国に事前通告せずに核実験を強行した。中国は不快感をあらわにしており、今後、国連安保理で制裁が強化されることは確実だ。逆に言えば、北朝鮮は国際的孤立を覚悟して今回の核実験に踏み切ったといえる」

 じつは、今の国際環境は、北朝鮮に非常に有利になっている。たとえば、北朝鮮がいちばん恐れているのはアメリカが本気で軍事的圧力をかけてくることだが、現在、オバマ政権はイスラム国(IS)をめぐる中東への介入にかかりきりであり、北朝鮮問題に対処する余裕がない。

 また、ロシアはシリアやウクライナをめぐって、中国は南シナ海をめぐってアメリカと対立しており、牽制し合う関係にある。

「それにシリア問題への態度でわかるように、オバマ政権は対外的には歴代政権でももっとも弱腰な政権です。来年、誰が新大統領になろうと、オバマ政権よりは手ごわくなることを金正恩もわかっています。したがって、オバマ政権のうちに、すなわち今年中に軍事的にやれることはやっておこうとするはずです」(同)

 こうした北朝鮮の核増強路線を、もはや中国ですら止められない。韓国では自衛のための「核武装論」が取り沙汰されている。

 今年は金正恩に世界中が振り回されるかもしれない。

(本誌取材班・上田耕司、藤村かおり、亀井洋志、牧野めぐみ、鳴澤 大/黒井文太郎)

週刊朝日  2016年1月22日号