近年、人手不足が叫ばれる介護業界で70代、80代のシニアヘルパーが活躍している。淑徳大学総合福祉学部の結城康博教授は、シニアにはシニアの需要があり、即戦力にもなるという。
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介護の資格にはいくつかあります。どれも年齢制限はありません。基礎的な資格としては、【1】「介護職員初任者研修修了者(旧ホームヘルパー2級)」。通常2~3カ月の受講とともに取得できます。そのうえで講習を受けて得られる資格が【2】「介護職員実務者研修修了者」。さらに専門性を高めたものが介護職のリーダーとなる国家資格の【3】「介護福祉士」です。介護関係の専門学校か短大などを卒業するか、介護業務に3年間従事して規定の講習を受ければ受験資格が得られ、試験に受かれば取得できます。
また、介護保険利用者の相談に応じて介護サービス計画(ケアプラン)をつくる専門職【4】「介護支援専門員(ケアマネジャー)」もあります。昨年度の合格率は19.2%。受講者が増えたぶん難しくなり、合格率は16年前の44%から半分以下と高嶺の花に。とはいえ最近は、50~60代から実務経験を重ね、70代や80代の方でも難関試験に挑戦し始めています。
在宅の介護現場では【1】の資格を持つことが条件とされますが、じつは介護施設では、法令上は介護士の資格がなくても働くことができるのです。利用者3人に対して介護者1人など国が決めた人員配置は全員が有資格者である必要はなく、人手が欲しいのが現実。高齢者は体力は劣りますが、そこは人生経験でカバーできます。経営側が若い世代との「役割分担」をうまくできれば、高齢者も即戦力になるのです。
労働そのものが本人の介護予防にもなるし、70歳から新たな情報を得たり繰り返し覚えたりすることが、頭の訓練になる。中には目標をもって勉強することで学生時代を思い出したといってイキイキ若返る方もいます。国家資格を得れば施設では5千~1万円ほど給与もアップする。
試験に落ちても無駄になることはありません。興味があれば一歩ずつ、基礎的な資格の受講から始めてみてはどうでしょう。
※週刊朝日 2015年9月18日号