漢方医学では、男性更年期障害の状態を大きく二つに分けてとらえる。一つは精神的ストレスによって生命エネルギーを指す「気」の巡りが悪くなった状態。イライラや不眠などの精神症状が出現しやすくなる。もう一つは加齢にともなって「腎」の働きが低下した状態だ。腎は漢方では生きていくために必要な生命エネルギーを貯蔵する臓器ととらえ、腎が不調になると老化が進み、気力や精力が低下すると考えられている。

 張医師は舌を見たり、脈に触れたりなど漢方独特の診察方法により、田島さんを気の巡りが悪くなった状態と診断。「柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」を処方した。すると4週間後には不調が徐々に和らぎ、2カ月後には頻尿の薬を服用しなくてもすむようになった。治療をはじめて4カ月経つが、現在症状は安定している。

「漢方治療はホルモン補充療法のようにすぐに効くわけではありませんが、じっくり根本的な原因を解決して治療することで、更年期以降の人生も順調に乗り切れるようになると思います」(張医師)

週刊朝日 2015年9月18日号より抜粋