「選書はどんな本であれ、図書館の『裁量権』の範囲と考えられていますが、税金を使う以上、なぜ購入したのか説明責任がある。蔵書の中身より、“20万冊の蔵書”にこだわり、短期間で書架を埋めてオープンに間に合わせることを優先した結果ではないか」

 CCCに選書基準を尋ねると、「『趣味実用』『料理』『旅行』『ビジネス』等のジャンルを中心に選書を行い、幅広く導入することを意識した」。「公認会計士第2次試験2001」や“Windows98”の本の選書については、「蔵書の増加にあたっては過去のアーカイブも含めて幅広く選定。結果、『幅広く』を意識しすぎた在庫が一部導入されており、更なる改善の余地があったと反省しています」。

 選書が「在庫処分ではないか」という声には、「全くの事実無根」と否定し「初期蔵書入れ替えで導入した1万冊については、開館後に累計8万6500回の貸出実績があり、幅広い読書機会の提供ができていると認識している」と回答。

 市民の疑問や不満の声は、選書だけにとどまらない。改修にあたり、書物や視聴覚資料など合計8760点が除籍、廃棄処分された。

「郷土資料『みを』『温泉博士』などが除籍されましたが、これらは県立図書館にも所蔵がない資料で貴重なものだった。さらに、武雄にしかない蘭学資料が詰まった『武雄蘭学館』は、TSUTAYAのレンタルコーナーに改修されてしまったのです」(「武雄市図書館・歴史資料館を学習する市民の会」の代表世話人・井上一夫氏)

 蘭学館には、国産第1号の大砲など蘭学資料が常設で展示され、昨年8月には2千点もの資料が国の重要文化財に指定された。電気通信大学の佐藤賢一准教授が、こう解説する。

「明治以前の西洋技術導入の歴史をひもとく武雄の蘭学資料は、非常に価値のあるもの。戊辰戦争の際に明治天皇からいただいた“錦旗”の現物も展示され、全国的に注目度は高かった」

 さらに、TSUTAYAのポイントカード「Tカード」が利用でき、自動貸出機を使うと1日1回3円分のポイントがたまるシステムも疑問視されている。

「ポイントがたまって使えるなら、提携している店を自然と利用するようになり、その店を優遇することになる。自治体が設置している図書館だが、結果的に利用者の購買をある特定のお店に誘導しているわけで、公共施設としては公平性を欠いている」(糸賀教授)

 選書をはじめ、図書館運営のずさんさに疑問を持った住民らが、市に対し、樋渡啓祐前市長に1億8千万円の損害賠償を求めるよう、訴えを起こしている。

 CCCが約3億円、市が約4億5千万円、計7億5千万円をかけてリニューアルした図書館。公共施設の中で最も活用される図書館だからこそ、“住民”を第一に考えることが大切ではないか。

(本誌・牧野めぐみ)

週刊朝日  2015年9月11日号より抜粋