家庭でつくれる「憧れの西洋料理」だった(撮影/岸本絢)
家庭でつくれる「憧れの西洋料理」だった(撮影/岸本絢)

「そういえば」と、妻が思い出した。子どものころ、「今日はチャーハンだよ」といって出てきたのが、ケチャップで炒められたご飯、チキンライスだったことがあったという。調べてみたら、戦前の婦人雑誌にも、“洋風炒飯”としてチキンライスのレシピが紹介されていたことがあったようだ。前回登場した煉瓦亭の3代目も言っていたが、チキンライスには、チャーハンの亜種の一面もあった。

 ナポリタンにオムライス、ケチャップ味は愛されていた。家庭料理の歴史や生活史に詳しく、『「和食」って何?』などの著者でもある阿古真理さんに、“愛された理由”を聞いた。ケチャップが一般家庭に本格的に普及したのは、高度成長期だという。

「明治以降、もともと西洋憧れがあった日本人が、戦後に西洋に追いつけ追い越せという気持ちがいっそう強まったんですね」

 並行して、ガスコンロや電気冷蔵庫の導入などキッチンまわりも発達した。「憧れの西洋料理」をつくれる環境が一気に整ってきたのである。

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