でも、それでいいのだ。マドンナが元AKBというのが、2015年の真実。なんかゴリライモも、番長というより、キレイなヤンキー然としたエグザイルっぽい風体だし。

 そして、2015年のひろしが暮らすのは、スカイツリーを望む下町、葛飾区立石。箱庭のような下町で、どこか夢のように生きている住人たち。

 みんな、ダメダメ人間のひろしを心配し、応援する。ふらりと帰って来た寅さんを受け入れる柴又の人たちみたいに。

 適当でいい加減なひろしだけど、ゴリライモはかなわない。なぜならひろしは、大人になるために捨てざるを得ないものを、いまだに持ち続けているから。

 その象徴は、平面ガエルのピョン吉がはりついた、Tシャツ。「ど根性ガエル」のアイデンティティーだ。けれど16年の時を経て、もはやピョン吉は、はがれかかっている。

 このピョン吉の声を、女優の満島ひかりが演じているところに、注目。これがまた、しみじみとうまいんです、満島ひかり。はがれるのか、はがれないのか。ひろしとの夢の時間が終わりを告げる哀しみの予感。

 もしかしたら、真のマドンナは、敦ちゃんじゃなくてピョン吉だったのか? て、「おいちゃん、それを言っちゃあ、おしまいよ!」。

週刊朝日 2015年8月7日号