映画評論家の佐藤忠男さん(84)は「つながりを大切にする方」と評す。初めて「思想の科学」に映画の評論を送ったときのことだ。

「単に採用、不採用とかではなく、励ましの言葉を十何枚もの便箋にしたためてあった。長い時間かけて書いてくださったんです」

 フリーライターの永江朗さん(57)は、京都の自宅で子ども時代の話を聞いたことがある。印象深かったのは、日米開戦後、渡米していた鶴見さんが無政府主義者の容疑で勾留されたときのこと。殺人犯と同じ房になったという。

「『怖くなかったのか』と尋ねると、鶴見さんは『怖いわけがない。人を殺すくらい純粋でいい人なんだから』と笑うんです。そんなものの見方があるのかと感心しました」(永江さん)

 過酷な戦争体験が反戦の原点となり、平和を訴え続けた。惜しむ声はやまない。

「今のこの時代に必要な方。その思想と姿勢を受け継ぎたい」と落合さん。黒川さんは言う。

「60代ぐらいから持病があり、遅かれ早かれそういうことになると覚悟はしていた。でも、そのときから30年以上も現役プレーヤーとして先頭に立ってくれた。ありきたりな言葉だけれど、長生きしてくれて本当にありがとう」

週刊朝日 2015年8月7日号