国際会議の場に青いシャツと革ジャンで現れたり首相府に黒バイクで乗り付けたりと、財務トップらしからぬ行動が注目を集めた。

 発言も過激だった。「自国の旧通貨ドラクマを再発行する可能性はあるのか」と問われたバルファキス氏は事実かジョークかわからない発言で世間を騒がせもした。

「輪転機をすべて壊した。独自通貨を発行する能力はない」

 緊縮策についても、受け入れを迫るのは、「テロ行為だ」と、真っ向から批判。ストレートな物言いが、EU側の反感をかったためか6日、財務相を辞任。こう見ていると、ギリシャが「悪役」のように思えるが、そうとも言い切れない。

「ギリシャは第2次世界大戦時にドイツに占領され、経済が破壊されました。ギリシャはドイツ軍の駐留費用も持ちましたし、西ドイツ復興時には多くの労働力を提供しています。それに、ドイツは大戦時の損害に対する補償を免れています。ギリシャ側には『今のドイツはギリシャの犠牲の上にあるのに』という思いがあるのです」(村田氏)

「ギリシャは年金が手厚い」との定説にニッセイ基礎研究所の前田俊之金融研究部部長は異議を唱える。

「トロイカの指導で年金制度が変わり、年金額は以前と比べ30%ほど切り下がっています。特別に恵まれている状況ではありません。25歳以下の失業率は50%を超えていますし、労働者の賃金水準は大きく低下しています。これらが、年金収支の悪化や政府の財政負担につながっています。緊縮策を打つほど、財政は悪循環に陥っているのです」

 著書『21世紀の資本』で知られる仏のトマ・ピケティ氏ら経済学者5人も緊縮策を批判。7日にメルケル首相に書簡を出し、ギリシャの債務を減免し緊縮財政案を見直すよう求めた。

 今のところ、メルケル首相は「債務削減は問題外」と強硬姿勢を崩していない。IMFのラガルド専務理事はIMFの規則に従って債務の返済をしなければ、融資をしない意向だという。ただ、仏オランド大統領はギリシャ側への配慮を見せ始めている。

 ギリシャは9日、EUに財政改革案を提出。増税や年金の給付抑制で1.3兆円以上の収支改善を目指す内容だ。メルケル首相は、どう出てくるだろうか。

(本誌・永野原梨香、西岡千史)

週刊朝日 2015年7月24日号より抜粋