「報道が事実なら、誠に遺憾であります」

 衆院特別委員会で安倍首相は窮地に立たされ、釈明に追われた。様子を見ていた自民党議員は言う。

「民主党の寺田学氏、辻元清美氏らネチっこい議員の追及を受け、首相はかなりイラついていた。『身内が足を引っ張るな』という心境だったでしょう」

 しかし、そもそも今回の会発足は、首相も大歓迎だったという。自らのヤジや憲法学者の「違憲」発言で、政権に逆風が吹き始めていただけに、流れを変える“援軍”と期待したようだ。会の準備段階から、側近の加藤勝信官房副長官や萩生田光一・党総裁特別補佐を派遣するほど入れ込んだ。

 さらに「この会にはもう一つ重大な役割があった」と言うのは自民党関係者だ。

「9月に総裁選がありますが、今回の“若手応援団”結成で、首相の無投票再選の流れをつくろうとしたようです。官邸サイドも指示した。対抗馬が出てくると反安倍の勢力が広がり、厄介ですから。5月、党内の別の若手議員が『分厚い保守政治』を目指す勉強会をつくった。首相に批判的な古賀誠元幹事長に近い議員が中心メンバーだけに、官邸は警戒していた。これをつぶす狙いもあったようです」

 そもそも問題発言をした百田氏と首相は親しく、対談本まで出している。その百田氏を安倍応援団が講師に招いての“炎上”。それだけに、官邸サイドのオウンゴールともいえる。自民党内からは「若手だけに責任を押しつけるのは気の毒」といった声も漏れる。

 安保法制を何としても進めたい、総裁をこれからも続けたい──そんな安倍官邸の思惑が透けて見えた今回の騒動。野党を勢いづかせ、沖縄の反発も強まった。苦境はなお続く。

週刊朝日 2015年7月10日号