では、どんな国が人気なのか。前出・ロングステイ財団の「ロングステイ希望国トップ10」を見ると、1位は9年連続でマレーシア。以下、タイ、ハワイ……と続く。

 人気の秘密はどこにあるのか。マレーシア政府観光局の山田美鈴氏は、「多民族、多文化国家であり、ロングステイの目的の1位である異文化に触れたいという要素を満喫できる」と話す。その上で、「気候が温暖」「比較的治安がよい」「英語が通用する」「花粉症がない」などの理由を挙げる。

「マレーシア・マイ・セカンド・ホーム(MM2H)という10年間のビザがあるのも大きい。マレーシアに一人でロングステイされる方は多いです」

 マレーシアでの滞在を控える成田慶子さん(58)も、離婚して娘3人を育て上げた、おひとりさま。現在は会社を早期退職し、現地で購入したコンドミニアムが完成する3年後に長期滞在を始める。購入資金は退職金や貯金などを充てる。

 長期滞在を決めた背景には、北海道内の施設で暮らす認知症の母親の姿がある。

「雑貨店を切り盛りし、社交的で友達も多かった母が、認知症になって変わりました。私ももうすぐ60歳ですし、自分の意思で自由に行動できる期間は長くない。それなら……って思ったんです」(慶子さん)

 背中を押したのは、旅行会社が企画した長期滞在の下見ツアー。行き先はマレーシアだった。「ユニクロなど、知っている会社もあって、イメージがまったく違った」。今はMM2Hの仮申請も済ませ、札幌の自宅は娘夫婦に譲った。

「せっかくの海外。現地でいろんな人たちと交流したい。一方で、マレーシアでの生活を特別なものにしたいとは思っていません。のんびり本を読んだり、自然を楽しんだり。今までと変わりない、普通の生活を送っていきたいですね」(同)

週刊朝日 2015年6月26日号より抜粋