※イメージ写真
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 中高年男性の皆さん、トイレで用を済ませた直後に“えっ?”と戸惑うことはないだろうか。誰にも言えずにひそかに悩んでいる人も多いはず。しかし、50代以上では3人に1人が経験者なのだ。

 尿漏れの種類は多い。出産を経験したり肥満気味だったりする女性に多いのは、くしゃみや咳をした拍子に漏れる「腹圧性尿失禁」。一方、強い尿意を感じてからトイレにたどり着くまでに間に合わずに漏れてしまう「切迫性尿失禁」は、男女を問わない。尿をためているときに弛緩しているはずの膀胱が勝手に収縮する「過活動膀胱」によるもので、服薬治療で改善する可能性があるという。

 排尿し終えたのに漏れ出てきてしまうのは「排尿後尿滴下」と呼ばれる症状。

「尿道に残った尿が後から出てくるもので、男性なら誰でも経験している。病気ではないんです」(東京都リハビリテーション病院泌尿器科の鈴木康之医師)

 だからといって安心はできない。この排尿後尿滴下や腹圧性尿失禁と区別がつきにくい「溢流性尿失禁」という症状があり、これは命に関わる病気につながる危険性がある。

「排尿後尿滴下は尿道に残った尿が漏れるのに対し、溢流性尿失禁は膀胱内の大量の残尿が溢れて出る現象です。膀胱内の残尿が増えると腎臓に逆流し、腎不全や全身感染症に発展するため、速やかに治療しなければなりません」(同)

 溢流性尿失禁の原因は前立腺肥大症や糖尿病などが考えられる。一般的に、尿が勢いよく飛んでいればまず心配はいらないが、体を動かしたときに漏れ出てきたり、排尿の勢いが明らかに低下し、頻尿や排尿困難で困っていたりするなら念のために受診するのがいい。

 尿漏れとあわせて男性機能の衰えを自覚するのは東京都の教員Cさん(58)。

「2年ほど前から尿漏れが気になり始め、女性に欲情したり朝に勃起したりすることも少なくなった。自分の男性器が役に立たなくなってきていると思い知らされた気がしました」

 ここにもプライドが見え隠れする。男性の尿漏れや頻尿、残尿感といった排尿トラブルは、男性機能とも密接に関係すると鈴木医師が語る。

「尿漏れは加齢や前立腺肥大症、あるいは前立腺がんの手術の後遺症など原因はさまざま考えられますが、勃起不全(ED)や高血圧、メタボリック症候群とも深く関連します」

 尿をためたり出したりする機能と、勃起する機能は関連が深く、排尿トラブルとEDを併発する男性は多いという。陰茎を通る血管は体の中で最も細く、いわゆるメタボやそれに起因する動脈硬化の最初の症状がEDであることが多い。血管が詰まることで男性機能や排尿機能にトラブルが生じやすくなるのだ。Cさんも尿漏れが気になりだした2年前は、体重が急激に増えた時期と重なる。

 症状を改善するにはどうしたらいいのだろうか。排尿トラブルに詳しい小牧市民病院(愛知県)泌尿器科の吉川羊子医師に聞いた。

「軽失禁とも呼ばれる軽度の切迫性・腹圧性尿失禁や排尿後尿滴下は、ある程度セルフケアで改善できるんです」

 吉川医師が勧めるのは排尿に関わる筋肉を鍛える骨盤底筋体操だ。頻尿やキレが悪いといった症状にも効果が期待できるという。

「おしっこを途中で止めるつもりで尿道を締める運動です。最初は陰のうの裏側の付け根に手を当て、筋肉が動いているのを確認しましょう」

 10回を1セットとして、朝昼晩と2~3セットずつ行うといい。どこでもいつでも、どんな体勢でもできるので、歯磨きや通勤電車などタイミングを決めると続けやすい。早ければ1カ月、通常3カ月程度で効果が出るという。

 また、陰のうの裏側から陰茎の先までを絞り出すようにこすって尿を出し切る「ミルキング」も排尿後のちょい漏れに効果的だという。歯磨きのチューブの中身を押し出すイメージだ。

週刊朝日 2015年2月20日号より抜粋