ざっくばらんな語り口なのに、どこか気品があるのは、やはり育ちのよさがなせる業?
 名優・佐田啓二さんを父にもち、小津安二郎監督にも可愛がられたという中井貴一さん。林真理子さんとの対談で明かした、「サラブレッド」と呼ばれることへの本音とは。

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林:「貴一」という名前は、あの小津安二郎監督がつけたんでしょう?

中井:そうです。「男の子が生まれたら俺が名前つけるよ」と言って、名付け親になってくださったんです。

林:私、中井さんが小津監督と一緒に写ってる写真を拝見しましたが、こんなこと言うと失礼ですけど、ふつうのお子さんのお顔というか、将来俳優さんになるような感じではなくて……。

中井:林さん、はっきり言ってくださってけっこうです、言われ慣れてるんで(笑)。僕は生まれたとき体重が4千グラムあったんですよ。皆さん“佐田啓二さんのご子息”というイメージで病院にいらしても言葉に詰まって、「はあ……。お元気そうな」ぐらいしか言えなかったそうです。林さんがごらんになった写真が、小津先生の最後の写真なんですよね。

林:そうなんですか。じゃあ、貴重な一枚ですね。小津監督が中井さんのいまのご活躍を見たら、すごく喜ばれたでしょうね。

中井:どうですかね。「まだまだ」とおっしゃるんじゃないですか。

林:中井さんって、お父さまもさることながら、小津先生にもかわいがってもらった、日本映画界のサラブレッド中のサラブレッドですよね。みんなが大切に大切にしてきて。

中井:デビューしたときにもそう言われて、「チクショー、俺は馬じゃねえ」って思ったんだけど、サラブレッドではないと思います。

林:じゃあ至宝! 日本映画界の。

中井:違う、違う(笑)。言い方を変えてほしいという意味ではなくて。確かに受け継がなきゃいけないものはあると思います。後輩たちに何を残してやれるか考える世代になったかもしれないですね。「いまどきの若いやつらは」って俺らもずいぶん言われたけど、俺はあんまりそう思わないんですね。若いやつのほうが真摯にいろんなものを受け止めてたり、学ぶことが多くて。

週刊朝日  2015年1月2-9日号より抜粋