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年間1700人が死亡…気管支喘息のさまざまな治療法

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週刊朝日#病気

 呼吸困難などの発作を繰り返す喘息(ぜんそく)。65歳以上の高齢者を中心に年間約1700人超が命を落とす病気だ。治療の中心は吸入による薬物療法だが、近年、配合剤を中心に薬物治療は進化。より操作が簡便で高い治療効果を併せ持つ薬が相次いで登場している。

 埼玉県に住む橋本宏さん(仮名・68歳)は40歳を過ぎたころ、夜中から朝方にかけて、息苦しさを感じて目が覚めることが多くなった。息をするたびに、胸や気管支の近くで、ヒューヒュー、ゼーゼーと音がして、しばしば痰が絡むことも。しかし、日中は苦しさがうそのように治まり、普段どおりの生活が送れた。

「風邪をこじらせたかな」

 その程度に考えて、やり過ごしていた橋本さんだったが、せきでぐっすり眠れない日が続き、発作がひどくなると苦しくてあお向けに寝ていられなくなった。

 すっかり睡眠不足に陥った橋本さんは、近所の内科医院を受診。専門的な検査を受けるため、昭和大学病院の呼吸器・アレルギー内科を紹介され、足立満医師(所属は当時、現在は山王病院アレルギー内科)の診察を受けた。胸部X線や肺機能検査、呼気の一酸化窒素の濃度を検査し、中等症持続型の気管支喘息と診断された。

 喘息は気管支などの気道(空気の通り道)が炎症によって狭くなる病気。明け方や夜中に強い症状が出ることが多く、激しいせきや呼吸困難を伴うこともあり、重症化すると発作で窒息死に至ることもある。

 治療は気道の炎症を抑える吸入ステロイド薬(ICS)を中心に薬物療法が推奨されている。症状により、狭くなった気道を広げる長時間作用性β2刺激薬(LABA)や発作治療薬の短時間作用性β2刺激薬(SABA)を加える。

 発作時に使う薬と長期管理時に使う薬がある。吸入薬は患者自身が口から吸い込むことで、薬効成分を気管支や肺に作用させるタイプの薬で、内服薬より少量で早い効き目があるとされる。2007年にはICSとLABAをひとつの薬として配合した「吸入配合剤」が主に長期管理時に使う薬として登場し、医療現場に浸透している。二つの薬の成分が一緒に作用し、気道の炎症と狭窄を同時に改善するだけでなく、1剤で吸入が済むので、吸入操作の手間が省けるなど利便性に優れているためだ。

 喘息の吸入配合剤は、これまで「アドエア」(剤型はドライパウダーとエアゾールの2種類)、「シムビコート」があり、13年11月に「フルティフォーム」、同年12月に「レルベア」が発売され、計5種類になった。

 橋本さんは、これまで吸入ステロイド薬をはじめさまざまな薬による治療を受けたが、11年10月、吸入配合剤で実績のある「アドエア250μg」に変更した。その後、足立医師による治療を続けるため、12年8月から山王病院に通院を始めた。

 治療開始後、症状は治まり、日常生活が送れるようになるまで改善した。しかし、アドエアの服薬から約2年経過したころ、のどに違和感を覚え、「声がれ」の症状が現れた。声がれはICSによる副作用のひとつで、ドライパウダー製剤でよくみられる症状だ。

 橋本さんは声が出にくくなるなどの不快な症状が続き、吸入回数を自己判断で減らすようになった。その結果、発作の回数が増え、発作を抑える薬の使用頻度も高くなり、肺機能の悪化がみられるようになった。

 足立医師は橋本さんからの相談を受けて、14年1月、声がれを起こしにくい「フルティフォーム125μg」(2吸入1日2回)に処方を変えることにした。

 この薬は効き目が早く表れ、効果が長時間持続する吸入配合剤で、最大の特長は加圧式エアゾール製剤であること。スプレーのように噴射して吸入することができる。

「この薬はドライパウダー製剤で症状が改善しない人や使いづらい人、声がれや味覚の変化、口腔内の違和感などの副作用で薬の服薬が継続できない人に勧められます」(足立医師)

 治療開始から約1カ月後には、喘息の状態を把握する指標であるピークフロー値が以前の350L/分から450L/分(基準値は470L/分)まで上昇し、症状が改善。悩んでいた声がれもなくなった。

 現在は治療を続けながら、日常生活に支障なく暮らしている。

週刊朝日  2014年9月5日号より抜粋


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