椎名林檎の歌う2014年NHKサッカーテーマソング「NIPPON」が「右翼的」だとインターネット上で騒ぎになっている。

 公開中のプロモーションビデオでは、冒頭からはためく日の丸と「NIPPON」の文字が画面いっぱいに映し出され、続く歌も<万歳!万歳!日本晴れ><乾杯!乾杯!いざ出陣>と、いかにもな勇ましさだ。

「日本の応援歌なんだから日の丸は当然」「深読みしすぎ」という声も多い。だが、チームカラーでの「純血性」を強調するかのような<この地球上で いちばん 混じり気の無い気高い青>、特攻隊を思わせる<あの世へ持って行くさ 至上の人生至上の絶景>など、意味深な歌詞をはためく国旗の下で歌われてしまうと、さすがにいろいろ勘ぐりたくもなる。

 椎名自身は出演したラジオ番組で「(NHKから)具体的にオーダーがありました。自分の色を出さず、それを忠実に再現したいと思い作りました」と語り、NHKから歌詞に対する要望があったことをうかがわせる。

 NHKに真偽を確認すると、「制作過程についてはお答えしない」(広報局)との前提で、楽曲に関しては「日本代表の活躍を通じてサッカーを応援したいという椎名さんの思いが込められていると受け止めています」との回答だった。

 サッカーと差別問題に詳しいジャーナリストの清義明氏は言う。

 

「サッカーは民族と文化のミクスチャー(混在)のシンボル。日本代表でも、さまざまな外国人が日本国籍を取得して仲間として戦ったこともある。最近は浦和レッズの一部のサポーターが掲げた『ジャパニーズ・オンリー』という横断幕が差別表現と大批判された事件もあったのに、サッカーのカルチャーをまったくわかってないとしか言いようがない」

 一方で「彼女の音楽に特段の政治性などない」と語るのは音楽評論家の宗像明将氏だ。

「デビュー当時から和の要素も含む過剰な様式美を押し出してきた人ですから、その要素が過剰に出すぎて議論を呼んでいるだけでしょう」(宗像氏)  

 W杯の盛り上がりと共にネット上の議論も白熱し、「これは椎名が右傾化する日本社会を世に問うた挑発の歌」説まで登場している。かつて「新宿系自作自演屋」を自称していたほどの彼女。意外にそのあたりが真実なのかもしれない。

週刊朝日 2014年7月4日号