犯行の動機は「20歳差」への失望だったのか。

 3月2日、大阪市内のあるコンサート会場。会社員の男性(34)が携帯型ラジオをステージに投げ込むなど、大暴れした。男性はその場で取り押さえられ、威力業務妨害容疑で逮捕。大阪府警天満署の取り調べに対して、「ファンだったけど、憧れの感情を断ち切りたかった」と話している。

 被害者は、声優で歌手の田村ゆかり。アニメ「ひぐらしのなく頃に」などで声優をしている田村。歌手としてはロリータ系ファッションに身を包み、キャッチコピーは「ゆかり王国のお姫様」。「永遠の17歳」を標榜し、アニメファンなどから人気を博していた。

 現実世界では、17歳どころではなかった。

 2月15日、ついに田村は、実年齢が37歳であることを明かした(現在は38歳)。これを受け、ネット掲示板などには「結婚するんだろうな」「さすがに少し寂しいな」といった書き込みが相次いだ。

 暴挙に出た男性も、その「年の差」にショックを受けたのでは、とささやかれた。だが、田村のファンクラブ会員である男性は懐疑的だ。

「ゆかりんの『永遠の17歳』はネタですよ。だって芸歴が20年近いんですから(笑)。ゆかりんは『料理が下手』『友達がいない』など自虐的な話で笑いをとるタイプ。結婚の“うわさ”も、浮いた話がないゆかりんを心配して、ファンがネットに書き込む“お約束”でした。本当のファンは、こんな事件は起こしませんよ」

 声優サイトの元編集長も首をかしげる。

「本来、声優ファンはマナーがいい。ゆかりんが“魔法のステッキ”を『メロメロメロ~ン』と振りかざせば、客はみんなで『メロ~ン』とウエーブを返します。そのウエーブの速さに段階があるほど、ファンは統制が取れているんです」

 では、なぜ彼は“暴走”したのか。田村の所属事務所は「何もお話しできません」と言うばかり。前出の声優サイト元編集長はこう推察する。

「いまやゆかりんは大物なんです。日本武道館や横浜アリーナでもコンサートを開けるようになり、マナーの悪い客も紛れるようになった。騒ぎを起こすことが目的のような、ひどい客もいます。今後は警備を手厚くする必要があるのかもしれません」

“ゆかり王国”に秩序は戻るのか。

週刊朝日  2014年3月21日号