週刊モーニングで連載中の「島耕作」作者・弘兼憲史さん(65)が、ユニクロの柳井正・会長兼社長(64)とこれからの日本企業のグローバル展開について対談した。

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弘兼:グローバルな展開のために必要な人材は、どういう人ですか。サムスン電子は、TOEIC900点を入社試験の基準にしていますが、日本もそれくらいやらないとダメですか?

柳井:ええ。そうしないと外国に出られないし、外国人と一緒に仕事ができない。我々も年間で千人から1500人ぐらいを採用するんですが、そのうち日本人は200~300人だけです。

弘兼:パナソニックも7割は外国人だと聞きました。

柳井:ある程度以上の規模の日本企業は、5割から7割ぐらい外国人がいるのが普通。その人たちと一緒に仕事をして、ときには対抗していかないといけない。「日本語しかできません」では問題外でしょう。

弘兼:英語のほかに注目するポイントはありますか?

柳井:約束を守れるとか、人の足を引っ張らない人ですかね。

弘兼:つまり、組織というのは一人で成り立つわけじゃない、集団となって大きな課題に取り組むのだから協調性が大事だと。

柳井:そう。協調性とリーダーシップと、フォロワーシップと……それこそ、島耕作が人気漫画として続いていることにもつながるけど、真、善、美ですね。それと同じで、生き方として真、善、美を理解して、仕事でもそれを発揮しようとしている人がいい。

弘兼:島耕作が行う人事の要点にもつながるところがありますね。しかし、たとえば社内で人事の不満が出たときはどうマネジメントするんですか?

柳井:それはやっぱり正当なフィードバックです。人事の公正さとか公明さも含めて、場合によっては全部発表するようにしないと。でもね、不平不満を抱いてる人というのは、自分の能力を過大評価している人が多いんですよ。能力というのは自分で判断するものじゃない。周囲の人が判断するものですよね?

弘兼:ええ。やりたいことと違う部署に回されたから辞めるという人もよくいますが、周りから見たら本人がやりたいことのほうが絶対に向いてないぞ、という。

柳井:自分じゃ自分は見えない。だから僕は、若い人にいつも言っています。自分の評価は自分でするなって。“自惚れ鏡”で自分を見たら、とんでもない姿が見えるもんです。協調性がない人で、よく自分のことを「一匹オオカミ」だと思ってる人がいますけど、それは“自惚れ鏡”で見た姿。実際は「一匹ブタ」ですよ。

週刊朝日 2013年9月6日号